2016/08/11

ポーランド⑩ ヴィエリチカ岩塩坑

★ヴィエリチカ岩塩坑


1044年の創業で、廃坑となっていない岩塩坑としては世界最古。もっとも現在商業採掘はおこなわれておらず観光用になってますが、世界最古の製塩企業でもあります。


ここの面白いところは、地下に広がる広大な坑道のうち3.5キロもの区域を観光用に開放していることで、中には当時の坑夫たちが掘った彫刻や、実際に使われていた塩の大聖堂などがあります。

当時使ってたほんまもんのエレベータで地下に降りるんですが、もともと観光用じゃないのでそれなりスリルがあります。



当たり前ですが壁も天井も全部塩、時折木を組んであったりボルト打ってあったりしますが岩とかなくて、全部塩。




塩で彫刻も作られてます、ポーランドの偉人コペルニクスやヨハネ・パウロ二世、その他にも小人とか。




で、これ。


これも塩の彫刻ですが、このお姉さん誰でしょう、ってお話が、このヴィエリチカ岩塩坑には重要なわけだったりするんですね。

ポーランド大公でもあったクラクフ公ボレスワフ5世って人がいまして…誰だそれって話かもしれないですな。
世界史的には「パレスチナには蜂蜜酒もビールもないからポーランド騎士団は十字軍に参加しません」と言って十字軍参加要請断っちゃったお父さんのレシェク1世とか、そもそもバラバラだったポーランド公国をまとめあげたお爺さんのカジミェシュ2世の方が有名なのかもしれないんですが、要はその子孫のポーランド王です。

で、この女性はその奥さんにあたる王妃でキンガさんといいます。

当時のハンガリー王ベーラ4世の娘にあたる人で、要は政略結婚として当時のポーランド王ボレスワフ5世に嫁に来た人なんですよ。
キンガさんは生来すごく宗教的にまじめで、生涯独身で一生を祈りと慈善活動に捧げると決めていたんだそうで、ボレスワフ5世との婚約が決まったとき、えっらいガッカリしたんだそうです。
ポーランド王から婚約指輪が送られてくるんですが、キンガはあんまりにも結婚が嫌なもんで、ハンガリー王国のマラムレシュ(現ルーマニア領内の都市)の岩塩坑の中に婚約指輪を放り投げて捨てちゃいました。

結局、両国の政治上の問題ですから婚姻は成立して、キンガさんポーランドへやってきます。
そして10年。
ある日、当時の首都クラクフ郊外の、当時はごく小さな岩塩の採掘所のあったヴィエリチカ村より「たいへんりっぱな指輪が見つかった。これは王室の女性のものに違いない」という一報が入ってきます。
キンガさんはその報を確認するためヴィエリチカに向かい、現地でその土地の代表者より指輪を見せられてびっくり仰天。なんとその指輪は以前キンガ自身が故郷のハンガリーでマラムレシュ岩塩坑の中に捨てた指輪そのものだったのです。


当時のヴィエリチカはちいさな採掘所で、塩を掘っているというより、外国より輸入した塩の保管場所として機能していました。
実は当時、ポーランドの主要な塩の輸入元はハンガリーで、ハンガリーから切り出された塩がヴィエリチカに運ばれて保管され、その切り出された塩の中に指輪が入っていたという理屈らしいんですが、「こんなの偶然であるわけがない、何かの啓示だ」と、旦那のポレスワフ5世は考えちゃったんですね、まぁたしかに偶然にしては物凄い話です。

旦那も嫁に匹敵する敬虔な宗教者であったので、なんと国家プロジェクトとしてその指輪の下を掘り進めたんだそうです。

するとどうでしょう、途方もなく巨大な岩塩床が発見されて、1250年、ポーランド王国はこの岩塩床からの塩の採掘を王立の事業とし、大規模な投資を行って事業を再編成しました。

当時、塩は同じ重さの金と同じ価値があったといいます、これがどういうことかはご想像の通り。

めでたしめでたし。

余談ですが、キンガさんは嫁に来ても、あまりにも敬虔で純潔を頑なに守ったそうです、旦那であるボレスワフ5世も敬虔な人だったもんで、なんとこれを受け入れてしまいまして、生涯二人とも純潔を守り、それがゆえにボレスワフ5世は「純潔王」と呼ばれております。
なので、政略結婚したのにお世継ぎはいませんでした。(死後、王位は従甥が継ぎました)

めでたしめでたし?

さて、そんな歴史のあるヴィエリチカ岩塩坑、ほんとに広大で、中には「塩でできた聖堂」もあります


これ、天井も壁も床も、すべて塩。




あたりまえですが彫刻もすべて塩。



驚くべきことに、シャンデリアのクリスタル部分、これも全部塩でできています。

内部には岩塩採掘の歴史を学べる展示なども数多くありまして




こんな地下深くに馬まで連れてきて大変だったんだなぁと。
採掘後期にはさすがに機械化されてトロッコなどもあったようですが


鉱山の外に出てみたら、最新の「岩塩ごりごりマシーン」が展示されてました、凶悪な造形ですな


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